心のクリニック 医療コラム
2026年1月5日
■やり残しが頭から離れない理由――未完了タスクと不安

「休んでいるのに頭が忙しい」「寝る直前に仕事のことが浮かぶ」。こうした状態は、気持ちの弱さというより、脳の仕組みで説明できることがあります。精神科・心療内科の外来でも、ストレスや不安、軽い抑うつの背景に“未完了の用事”が積み重なっているケースは少なくありません。

1. 未完了は「注意」を引き戻す
人は終わったことより、途中で止まっていることを思い出しやすい傾向があります。脳は未完了の項目を「まだ危険(未処理)かもしれない情報」として保持し、ふとした瞬間に想起させます。その結果、作業中も休息中も思考が割り込み、反すうや焦りにつながりやすくなります。

2. 切り替えが多いほど疲れやすい
メール、チャット、電話、対面対応など、短時間で役割を切り替えるほど、脳は“前の作業の名残”を抱えたまま次へ移ります。集中が戻りにくく、処理速度や正確さが落ち、自己評価の低下やイライラとして表れやすくなります。デジタル環境では、この切り替えが一日中続きやすい点も負担です。

3. 心と体の反応として出るサイン
未完了感が続くと、交感神経優位の時間が長くなり、入眠困難、浅い睡眠、胃腸の不調、肩こり、頭痛など“自律神経の症状”として現れることがあります。本人は「気合いが足りない」と捉えがちですが、実際は負荷が可視化されにくいだけ、ということもあります。

不安や不眠、集中低下が続く場合は、背景にある負荷を整理し、必要に応じて治療(薬物療法)や心理療法(認知行動療法、ACT、カウンセリング)を組み合わせることで、回復の道筋が見えやすくなります。