心のクリニック 医療コラム
2025年9月26日
仕事の不調を長引かせない「早めの舵取り」術

「最近、出社前から胸がざわつく」「上司の言葉が頭から離れず眠れない」。そんなサインは、こころと身体の負荷が許容量を超え始めた合図です。放置せず、まずは“悪循環を断つ”ことから始めましょう。ポイントは①睡眠の立て直し②環境調整③小さな行動の再開の三本柱です。

まずは睡眠。寝不足は判断力と感情の制御を鈍らせ、不安や焦りを増幅させます。朝はカーテンを開けて光を浴び、起床・朝食・就寝の時刻をおおよそ一定に。寝酒や就寝直前のスマホは睡眠の質を下げやすいので避けましょう。夕方以降のカフェインも控えると、翌日の回復力が上がります。

次に環境調整。負荷が高い業務や人間関係の課題は、一人で抱え込まず上長や産業保健、人事に早めに共有を。業務量の一時的な軽減、配置転換、在宅勤務の併用など、調整の選択肢は複数あります。体調の波に合わせた勤務計画は“逃げ”ではなく、回復のための戦略です。

症状が強い場合は休職も検討します。休む目的は「何もしないこと」ではなく、生活リズムの再構築と再発リスクの把握です。日中は起きて活動(散歩・軽運動・家事)を少しずつ増やし、夜は眠る基本サイクルへ。復職前には、業務の種類・量・評価の方法を職場と合意する「段階的復帰プラン」を用意しておくと安心です。

不調はこころだけの問題ではありません。腸の調子がゆらぐと気分も揺れやすくなります。発酵食品や食物繊維を意識し、朝食でタンパク質をとることで、日中の“やる気”のガソリンが補給されます。さらに、朝の光を浴びることは体内時計を整え、日中の集中と夜の眠気を自然に後押しします。

最後にコミュニケーション。意見の違いは避けられませんが、「事実→自分の気持ち→お願い」の順で率直に伝えるだけで、衝突はぐっと減ります。完璧を目指さず“6割で出す”習慣をつけると、停滞がほどけ、自己効力感が戻ってきます。

つらさが続く、朝が特にしんどい、ミスが増えた――そんなときは専門家へ。医師の診断と心理職の支援を組み合わせると、職場との調整や復職計画づくりがスムーズです。