心のクリニック 医療コラム
2025年9月25日
仕事を守る「休む力」と「戻る力」—今日からできる小さな設計

「限界かも」と感じたら、それはサボりではなく“安全装置”が作動した合図です。いちど立ち止まる勇気は、未来のキャリアを守るための戦略。まずは症状の強弱に関わらず、睡眠・食事・光・会話という4つの土台を整えましょう。朝はカーテンを開けて外の光を浴び、15分だけでも歩く。朝食でたんぱく質を少し。夜は布団に端末を持ち込まない—この3点だけでも、心身のリズムは少しずつ揃います。

仕事との距離の取り方は「完全停止」だけが選択肢ではありません。主治医と相談し、短時間勤務・在宅併用・役割の棚卸しなど“段階的な休み方”を設計すると、復職の再点火が滑らかになります。復帰計画には①睡眠と服薬の安定、②疲労の見える化(通勤リハや日中活動量の記録)、③不調サインのリスト化(胸のざわつき・集中切れ・飲み込みづらさ等、あなた固有の兆し)を含めると再発予防線になります。

人間関係で消耗する方は、伝え方・聴き方の「型」を一つだけ持ち帰ってください。たとえば〈事実→気持ち→お願い〉の順に短く伝える、相手の言葉を10秒だけ要約して返す。この二つだけで衝突は目に見えて減ります。さらに、1日の終わりに“今日よかった3つ”を書き出す感謝メモは、思考の焦点を「できない」から「できた」へと戻してくれます。考えが堂々巡りするときは、ノート1ページだけ“言葉にして外に出す”。曖昧な不安は、言語化すると扱える課題に変わります。

「頑張る」は大切。でも、頑張り方を変えることはもっと大切です。休職も復職も“負け”ではなく、働き方をアップデートするプロジェクト。迷ったら専門家に早めに相談し、あなたに合うペースを一緒に探しましょう。