心のクリニック 医療コラム
2025年9月24日
働き直す力を育てる——休職判断・睡眠・対人スキルの「三点セット」

「限界サイン」は、朝の動悸・思考の空回り・眠りの質低下として同時に現れがちです。無理に踏みとどまるより、いったん立ち止まる決断は“逃げ”ではなく、将来のキャリアを守る選択です。休職は①主治医と症状・勤務負荷の整理、②産業医・職場との役割分担、③復職後の再発予防策の設計——という流れで進めると安全に戻りやすくなります。

再発予防の核は睡眠。起床時刻をまず固定し、朝の光を浴び、日中は軽い運動と人との関わりを少量でも入れる。夜はカフェインやアルコールの遅い時間帯の摂取を控え、寝室の光・温度・音を整える——こうした環境×行動の組み合わせは、気分・集中・疲労の土台を底上げします。

次に、言葉の使い方。頭のなかの不安を「三語メモ」で外に出し、事実・仮説・行動の順に並べると、混乱がほどけます。伝える場面では「結論→理由→お願い」の順で短く、聞く場面では相手の言葉を一度そのまま言い直し、最後に確認質問を添えると衝突が減ります。小さな感謝を口に出すことは、自分の注意を“できていること”へ向け直し、気分の回復を助けます。

体調のアクセルとブレーキも意識しましょう。朝は日光とたんぱく質、通勤や買い物ついでのウォーキングで活動スイッチを入れる。夜は入浴で体温リズムを整え、ベッドでは「眠れないなら一度起きる」刺激制御を徹底する。腸の調子を崩す暴飲暴食は控え、よく噛んで食べる。こうした生活介入は、焦燥やだるさの波をなだらかにします。

ひとりで抱え込まないための「助けの地図」も用意を。主治医・産業医・上司や人事・家族友人・相談機関の連絡先を一枚にまとめ、週1回は誰かと短い雑談を“予定として”組み込むだけでも、戻る力は増します。