悩みの全てに“自分で変えられる部分”はあるのか。答えはNoです。けれど、完全に手放す必要もありません。鍵は、物事を三つの同心円で仕分けること。①自分で直接コントロールできること(行動・時間の使い方・伝え方)。②影響は与えられるが決めるのは他者であること(依頼・交渉・提案)。③受け止めて選び直すしかないこと(過去の出来事・他人の反応・天候)。まず紙に悩みを一つ書き、要素を三つに色分けします。①には即行動を書き、②には“依頼文の型”を用意し、③には「受け入れる覚悟」と「自分を守る選択肢」を並べます。
この整理が効くのは、コントロール感が回復すると不安や落ち込みが和らぐからです。たとえば、人事異動の不安。①は睡眠・食事・運動・情報整理。②は上司への確認と希望の伝え方(事実→希望→理由→代替案)。③は決定そのもの。③に留まる反芻を続けるほど、心のエネルギーは消耗します。そこで、注意のハンドルを自分に戻す工夫を。朝の10分で「今日できる①の一歩」を3つ書き、昼に②の1本連絡、夜は③を手放す儀式(深呼吸30秒、スマホの定位置、軽いストレッチ)。さらに、“一次のコントロール(環境を変える)”と“二次のコントロール(自分の受け止めを変える)”を使い分けると、頑張りどころが明確になります。価値観に沿った一歩が踏み出せたら、その日の自分を肯定して終えましょう。
反対に、境界線を越えてまで③を変えようとすると、摩擦が増え、関係は疲弊します。週末には“円の棚卸し”を。先週の悩みをもう一度三つの円に置き直し、①の行動が増えたか、②の依頼は適切だったか、③の受け入れにケアを足せたかを点検します。手帳の見返しページに三つの円の簡単な図を描いておくと、迷いが出た瞬間に戻れます。自分が握れるハンドルを確かめ、握れない部分は受け入れと相談で乗り切る。悩みを“円”に置き直すだけで、行動計画が見えてきます。