心のクリニック 医療コラム
2025年9月22日
“聞き手力”で会議が変わる——5つの実践ポイント

会議がかみ合わない理由の多くは、話す技術より「聞く技術」の不足にあります。聞くとは、黙って相手を見守るだけではありません。言葉の意味と感情を正確に汲み取り、理解が合っているかを確かめ、次の行動につなげる行為です。研究でも、率直に傾聴された側は安心感が高まり、協力的な態度や満足度が上がることが示されています。今日から使える5つの手順をまとめます。①姿勢を整える:視線を向け、うなずき・相槌で“関心のサイン”を出す。スマホは伏せ、相手のペースに呼吸を合わせる。②要約する:相手の要点と感情を一文で返す。「つまり〇〇で、不安は△△ですね」。③開いた質問:Yes/Noで終わらない問いで情報を広げる。「まず困っている場面はどこでしょう」。④確認して合意:解釈のずれを最後に点検する。「私の理解はここまで。合っていますか」。⑤行動に落とす:締めに「次の一歩」を一文で決める。聞く側がこの型を回すだけで、話し手の思考が整理され、合意形成が早まります。

つまずきやすい点も押さえておきましょう。相手の話の途中で「わかるわかる」と自分の体験談にすり替える、結論を急いで助言から入る、言い換えが過剰で“尋問調”になる——これらは信頼を削ります。コツは、評価や反論をいったん脇に置き、「事実(何が起きたか)」「解釈(どう受け取ったか)」「感情(どう感じたか)」の三つを丁寧に分けて聴くこと。非言語も重要です。うなずき・沈黙・相槌・視線の置き方が“安心して話せる場”を作ります。メモを取るなら、左に要点、右に次の質問やToDoを書き分ける“二段メモ”がおすすめです。短時間の会議では「3分ウォームアップ」を導入しましょう。最初の90秒で聞き手が要約、30秒で確認質問、残り60秒で合意事項とToDoを言葉にする。1対1でもグループでも、聞き手が流れを整えるだけで余計な衝突は減ります。“結論は最後、理解は先に”。この順番が、関係を強くします。