心のクリニック 医療コラム
2025年9月21日
復職準備は「段階設計」でうまくいく——5つの流れを自分事に

休職からの再スタートは、意志の強さよりも設計の巧さが結果を左右します。基本は①休業中のケア、②主治医の就労可否判断、③職場での復職可否の検討と支援プラン作成、④リハビリ出勤を含む最終決定、⑤復職後フォローの5段階。ここに自分の暮らし・症状・仕事の実情を重ねて「具体化」すると迷いが減ります。

まずは生活リズムを整え、起床・就寝・食事・運動・服薬を1〜2週間ログ化。通勤時間の歩行や階段、人混みの刺激に身体が慣れるかを自宅周辺で試します。次に、連続作業60分×2〜3セットや、簡単な事務作業を想定した「集中→切替」の練習を行い、疲労度を確認。主治医の診察では、実地の手応えをもとに就労可否と配慮点(時間短縮・在宅併用・締切の緩和など)を言語化しておきましょう。

職場とは、業務量の段階表(例:週20→30→40時間、電話対応は第2週から等)と評価タイミング(例:各週末の10分面談)を先に擦り合わせます。復職初期は「前と同じ」より「欠けても回る」を優先。メールは午前集中/午後は対人、会議は50分で区切る等、疲労をためない運用も効果的です。試し勤務は2〜6週間を目安に、時間・業務内容・責任範囲を段階的に広げ、体調が揺れたら一段階戻す「可逆設計」を採用します。

さらに、役割分担を明確に。本人はセルフモニタリングと報告、上司は配慮の実装と優先順位の調整、産業医は健康面の助言、同僚は情報共有と過度な気遣いの回避。これだけでも心理的負担が下がり、チームの納得感が高まります。復職後は、睡眠・食事・運動・気分のセルフチェックを継続し、再発サイン(眠れない、食欲低下、同じことを何度も確認、朝の動き出しが遅い等)をチームで共有。無理を押し通す前に小さく調整する文化が、安全な長距離走を支えます。意思決定の拠り所は「診断書だけで決めない」「段階的に試す」「定期面談で見直す」の三本柱です。復職は“イベント”ではなく“プロセス”。焦らず、確実に。共有ノートやチャットで“その日できたこと・疲労度・困りごと”を簡潔に残すと、調整が早まり再発予防にもつながります。