心のクリニック 医療コラム
2025年9月20日
「適応障害かも?」と思ったら——見極めと動き方のミニガイド

最近、特定の出来事や人間関係を考えると胸がざわつき、仕事や家事の能率が落ちる。休日は平気なのに、出勤前だけ動悸や吐き気が強まる——こうした“ストレス源に結びついた不調”が数週間続くときは、早めの対応が肝心です。目安は二つ。第一に、出来事へのとらわれ(同じ考えがぐるぐる回る、先の不利益ばかり想像する)。第二に、適応の難しさ(集中低下、睡眠の悪化、遅刻・欠勤などの機能低下)。この二つが生活に支障を及ぼすなら、受診や職場調整を検討しましょう。

最初の一歩は“棚卸し”。負荷を四象限(量/時間/人/場所)で書き出し、変えやすい順に小さく動かします。たとえば締切の再設定、会議の聴講参加、席や業務の一時的な変更など。“全部やめる”のではなく、“一部を軽くする”。産業医や人事の相談窓口も遠慮なく活用を。産業保健支援機関では無料相談が利用できます。

医療受診では、睡眠・食事・症状の簡単な日誌が役立ちます。診断名にこだわりすぎず、原因状況と症状の時間的な関係、生活機能の変化を一緒に点検。強い自傷衝動、極端な不眠や摂食低下、交通機関でのパニックがあるときは早めの休養も選択肢に。職場の就業規則や公的給付の確認は、医療・産業保健の専門職に相談しながら進めると安心です。

目安として、症状は出来事の後おおむね1か月以内に目立ち、原因が続かなければ数か月のうちに落ち着くことが多いと言われます。一方で、状況が長引けば不調も長引くため、環境の調整と並行して回復計画を立てることが大切です。通勤の混雑回避、在宅日の設定、難易度の低いタスクから着手する“初動のハードル下げ”、会議前後の5分休憩など、身体にかかる負荷を先に整えると心も追いつきやすくなります。不安が強い場面では、4秒吸って6秒吐く呼吸を1〜2分。“事実/解釈/次の一歩”の三行メモも有効です。家族や同僚には、今の状態と助かる配慮をひと言で共有しましょう。