眠れない夜はつらいもの。けれど、慢性的な不眠には“寝ようと頑張る”ほど眠りが逃げるという逆説があります。科学的に効果が確かめられた行動療法(CBT-I)は、眠りの仕組みに合わせて習慣を並べ替える方法。代表的な五つを紹介します。
①刺激制御:ベッドは「寝る・親密な行為」専用に。眠れないまま20分以上経ったら一度起き、眠気が戻ってから戻る。「寝床=起きている場所」という学習をほどきます。
②睡眠制限(最適化):実際に眠れている時間に寝床滞在を合わせ、徐々に延ばす。朝の起床時刻は毎日固定。
③認知の見直し:〈今夜も一睡もできない〉など極端な思い込みを点検し、〈短くても回復する夜はある〉と現実的な考えに置き換えます。
④リラクゼーション:ゆっくりとした呼吸、漸進的筋弛緩、ぬるめの入浴で心身を鎮める。
⑤睡眠衛生:就床2〜3時間前のカフェイン・大量飲酒・激しい運動は避け、朝の光と日中の活動を増やす。2〜4週間は同じ方針を継続すると効果が出やすい。
根拠は明確です。海外の臨床ガイドラインでは、慢性不眠への第一選択として行動療法が推奨されています。複数の研究で、入眠までの時間や途中覚醒が短くなり、睡眠効率が改善することが示されています。国内でも提供の指針が整いつつあります。
実践のコツは三つ。第一に“起床固定を軸に”。寝る時間は前後しても、起きる時刻は毎日そろえる。第二に“寝不足の借金は昼寝10〜20分で”。夕方以降の長い仮眠は夜の眠気を奪います。第三に“最初の1週間は少し眠くて普通”。安全に配慮しつつ、徐々に慣らしましょう。途中で不安が強まる場合は、専門家と一緒に調整すれば大丈夫。なお、睡眠日誌で「寝床滞在」「推定睡眠」「途中覚醒」を1週間だけ記録すると、改善点が見えます。よくある勘違いは、“横になっていれば休める”という思い込み。実は、眠れないまま長時間横になると、寝床=緊張という学習が強まり、次の夜がさらに難しくなります。だからこそ、“短く深く、規則的に”がカギです。強い眠気での運転・機械作業は避け、持病や妊娠中の方は医療者と計画を。お薬を使用中でも、自己判断での急な中止は禁物です。まずは行動の微調整から。