心のクリニック 医療コラム
2025年9月18日
休職と復職を進めるための「5つの段取り」

体調が崩れたとき、勢いで動くほどこじれがちです。道筋を先に決めましょう。基本は①休業の宣言と連絡体制の一本化②治療と生活リズムの立て直し③就労可能性の評価④職場復帰プランの設計と試し出勤(リワーク等)⑤本復帰後のフォローの五段階。

①では、上司・人事・産業保健の窓口を一つに定め、連絡頻度も合意しておくと安心です。記録は日付入りで残し、感情的なやり取りは避けます。休職規程や賃金・有休、傷病手当金など制度面も早めに確認を。家族への共有範囲も決め、同じ説明を何度も抱え込まない工夫が大切です。

②では、睡眠・食事・運動・人との接点という「24時間の骨組み」を整えます。昼夜逆転や刺激過多は回復を遅らせます。午後の長い昼寝、夜間の濃い情報摂取、アルコールによる“無理な鎮静”は避け、日中の活動量を少しずつ増やします。セルフモニタリング(就寝起床時刻、歩数、達成メモ)を週単位で振り返ると変化が見えやすくなります。

③は主治医の診療所見が軸。症状の波、服薬の安定、通勤耐性、対人負荷の許容量、注意集中の持続など“働く力”を具体項目で点検します。職場提出用の意見書や復職判定に必要な情報は、本人の同意のもと医療と産業保健で連携します。

④の設計は「戻す」のではなく「再設計」。業務の負荷を段階化し、頻度・時間・責任の三つを少しずつ増やします。短時間勤務、時差出勤、静かな席、在宅併用、対人ストレスの低いタスクから開始、など配慮例を最初に合意しておくと摩擦を防げます。医療機関や地域のリワークは、日中活動・対人刺激・課題処理を安全に練習でき、再休職リスクの低減に寄与すると報告があります。

⑤は“復職がゴールではない”の確認。初月は週次、3か月は隔週、半年は月次の節で振り返りを入れ、無理の芽を早めに摘みます。上司は事実ベースのフィードバック、本人は「できたことメモ」で自己効力感を育てる——この二本柱が安定継続の鍵。再発サイン(寝つきの悪化、遅刻の増加、先延ばし、苛立ち、過食・過飲など)を共有し、早期相談のルートを明確にしておきましょう。