人間関係の摩擦は、多くが“伝え方”の問題で起こります。感情のまま主語が「あなた」になると、相手は防御的になり、話が前に進みません。そこで役立つのが、状況・行動・影響の順に事実を整理して伝える方法です。評価や性格づけを避け、観察できる出来事に絞るのがコツ。短時間でも、関係を壊さずに改善の糸口を見つけやすくなります。
手順はシンプルです。①状況:いつ・どこでの話かを一言で示す。②行動:見聞きした具体的な行動だけを述べる。③影響:自分やチーム、業務への影響を説明する。最後に「どうしたらよいか一緒に考えたい」と未来志向で締めます。
例:「昨日の企画会議で(状況)、他の人の発言に何度かかぶせて話していました(行動)。新人が意見を言いにくそうにしていて、議論が深まらなかったと感じました(影響)。次回は発言の合図を決めませんか?」肯定的な場面でも使えます。「今日の資料、冒頭で要点を3つに絞っていました(行動)。議論がスムーズに始められて助かりました(影響)。次回もこの構成が良さそうです」。
よくある落とし穴は三つ。①人格批判にすり替わる(「配慮がない」等のレッテル)。②一般化が多い(「いつも」「みんな」)。③曖昧な要求(「もう少し気をつけて」)。これらを避けるため、会話前に60秒だけメモを作りましょう。「状況」「行動」「影響」「提案」の4行で十分です。
さらに効果を上げる工夫:①“その場で”より、双方が落ち着ける場所と時間を選ぶ。②ネガティブ1に対し、ふだんからポジティブ3を積み重ねる。③相手の意図を確認する一言を添える。「意図は別にあったかもしれませんが…どう感じましたか?」④合意の確認で締める。「次回は開始5分前に役割を決める、で合っていますか?」
受け取り側も同じ型で整理すると、話が噛み合います。防御的に反論する前に「状況の確認→自分の行動→相手への影響」を復唱し、必要な調整点を一緒に探しましょう。
オンラインやチャットでも同じです。文字は感情の温度が伝わりにくいので、「事実→影響→提案」を一文ごとに分け、句点ごとに短く区切ると誤解が減ります。
大切な話ほど、第三者の場で練習すると安全です。医療機関やカウンセリングでは、具体的な例を使った“伝え方リハーサル”も行えます。悩みを抱え込む前にご相談ください。