心のクリニック 医療コラム
2025年9月14日
再発を防ぐ復職ロードマップ

復職は「時間×負荷×環境」を段階的に調整するプロジェクトです。段階化の効果は実証があり、ある企業の新プログラムでは、復職後1年の出社継続率が54.2%→91.6%へ改善。定期面談、6か月の段階復帰、生活記録に基づく判定の三本柱を採用し、投資収益率(ROI)は900%超という試算もあります。一方、支援を受けても約1年で20%が再休職・離職に至る報告があり、準備と合意形成の質が成否を左右します。
実践の目安:第1週は午前×3日(単純タスク中心、会議は聴講のみ)。第2週は午前×4日(資料更新・メール整理を追加)。第3週は6時間×4日へ延長(外部対応は限定)。第4週は6~7時間×5日(重要業務は共同で)。以降は「業務量→時間→日数」の順に増やします。各週の終わりに「疲労回復までの時間」「集中の持続」「対人負荷」「睡眠安定度」を1~5で自己評価(平均3未満が続けば据え置き、2未満なら1段階戻す)。
復帰直後の3か月は残業ゼロ、会議は前半のみ、電話は1日○件まで、席は出入口から離す、在宅○%併用など“仕様”で合意。週1の状態確認ミーティング+日次の活動記録で“見える化”を継続します。平均107日の初回休職に対し、早戻りで157日に延ばさないために、好調な日こそ余力を残す運用を。疲労が翌日に残る、入眠困難が3日続く、自己否定思考が強まる等のサインが出たら、即座に負荷を1段階戻しましょう。
活動量の設計例:日中の合計活動時間を第1週は180~240分、第2週は240~300分、第3週は300~360分、第4週は360~420分に。模擬通勤は20~30分×週3回、図書館やコワーキングでの作業は45~60分×2セットから開始。昼寝は20分以内、就寝前90分は画面オフ。週末は負荷を1段階下げ“週末反動”を予防します。これらを記録し、平均値と最低値をグラフ化して産業医・職場と共有すると、客観的に判断しやすくなります。
節目の面談は「復帰当日・1週・2週・4週・8週・12週」を目安に各15~30分。会議参加は第1月は出席50%まで、第2月は75%、第3月で100%を検討。コミュニケーションはテキスト中心→短時間の対面→通常へと段階化します。復帰直後は“できたこと”の割合を毎日60%以上に保つことを目標に、未達日は翌日の負荷を必ず1段階下げる。こうした“数での合意”が、再休職を防ぎ、1年後の継続率を高めます。