心のクリニック 医療コラム
2025年9月14日
職場に伝える前に整える「休職の初動」

体調が限界に近づいたら、まず確認したいのは(1)医療、(2)手続き、(3)生活の三本柱です。医療では早めの受診と、必要に応じた診断書の準備。手続きでは就業規則と休職規定、社会保険の給付や社内の相談窓口を把握し、産業医や人事の連絡先を特定します。生活では起床・就寝・食事・日中の活動量を1日3行で記録し、悪化要因(夜更かし、過度な刺激)と回復要因(朝散歩、ぬるめの入浴)を見える化しましょう。

上司への伝え方は「結論→医師の見立て→当面の連絡方法→引き継ぎ」の順が安心です。詳細な病名や私生活まで開示する必要はありません。必要以上に説明し過ぎないことが、後の関係性と再出発を守ります。文面例:「体調不良のため医師と相談し、一定期間休養が必要との判断です。連絡は人事に一本化させてください。業務はAさんへ引き継ぎ、期日管理表を添付します。」

初期の数週間は“治療と休息に専念”。メールやチャットの既読負担を減らすため、連絡窓口を一つに限定し、返信は主に家族または人事へ。焦って復帰時期を約束しない代わりに、「医師と相談し段階的に判断します」とだけ伝えましょう。

大切なのは「今の自分を守る決断」。休むことはキャリアを諦めることではなく、むしろ長く働くための投資です。今日からできるのは、記録帳の作成、連絡体制の整理、睡眠時間の確保。小さな一歩が回復の土台になります。

よくある誤解は「迷惑をかけるくらいなら辞めるべき」という極端な思考です。急いで退職や異動を決めると、体調が整う前に環境だけ変わり、かえって長引くことがあります。まずは安全を確保し、評価や昇進の不安は“いったん棚上げ”。回復してから必要な交渉をすれば十分間に合います。

感情のケアも忘れずに。罪悪感や不安が強いときは、1日の終わりに「できたこと」を三つ書き出す、朝に同じ散歩コースを歩く、カフェインを午後は控えるなど、心身の再起動スイッチを作りましょう。身近に相談できる人がいなければ、医療機関や自治体の相談窓口を積極的に利用してください。

引き継ぎは「期限・連絡先・進捗の見える化」が鍵です。担当一覧、今後7~14日の期日、関係者の連絡先、資料保管場所、注意点(過去トラブルや決裁ルール)を1枚にまとめ、共有ドライブと紙の双方で残しておくと、休養中に問い合わせが来る頻度が下がります。余裕があれば自動返信の設定や、急ぎの連絡経路を明示してから休みに入りましょう。