心のクリニック 医療コラム
2025年9月11日
ぐっすり眠れる脳のための『90分前ルール』

「布団に入ってからスマホを眺めているうちに夜更かししてしまう」――そんな生活を続けていると、脳は“眠る時間”を見失い、翌朝の集中力や感情コントロールが低下します。質の高い睡眠を取り戻す鍵は、就寝90分前に体温と光環境を同時にリセットすること。40℃のお風呂に10分浸かり、深部体温がゆるやかに下がるタイミングでベッドに入ると、メラトニンの分泌がピークを迎え自然に眠気が訪れます。同時に、スマホやPCのブルーライトを遮断することで、メラトニンを妨げる光刺激をカット。最近では、入浴後に暖色系の間接照明で過ごすだけでも副交感神経が優位になり、眠りに落ちるまでの時間が約30%短縮されたという報告もあります。

さらに、夕食は就寝3時間前までに消化の良い和食中心に切り替え、寝る前のカフェインやアルコールは避けましょう。寝室の温度は春秋で18〜22℃、湿度は50%前後が理想的。枕元にラベンダーの精油を一滴垂らすだけでも、入眠直後の深いノンレム睡眠が伸びることが分かっています。もし入眠に20分以上かかる夜が1週間続く場合は、睡眠日誌をつけて生活リズムを可視化し、休日の“寝だめ”を2時間以内に抑えるなど、起床時刻を一定に保つ工夫をするとリズムが整いやすくなります。ポイントは「起きる時間を固定し、寝る時間は自然に任せる」こと。体内時計の中心である視交叉上核は光刺激でリセットされるため、朝起きたらカーテンを開けて2000ルクス以上の自然光を浴び、脳に“朝が来た”と宣言しましょう。

それでも日中の眠気が取れない場合は、15時までに20分間のパワーナップ(積極的仮眠)を取り入れると、脳波がアルファ波からシータ波へスムーズに移行し、覚醒後の作業効率が飛躍的に向上します。仮眠前に厚生労働省が推奨する200ml程度のカフェイン飲料を摂ると、目覚めがスッキリします。

睡眠は「時間」より「質」。90分前ルールと朝の光リセットを習慣化し、脳本来のメンテナンス機能を最大限に引き出しましょう。今日からできる小さな工夫で、明日の自分が変わります。