心のクリニック 医療コラム
2025年12月19日
■体温リズムを味方にする――入浴で「寝つき」を整える

眠ろうとしているのに目が冴える。不眠が続くと、気分の落ち込みや不安、集中力低下につながりやすく、日中のパフォーマンスも下がります。睡眠の質を左右する要因の一つが「体温」です。人の体は夜に向けて深部体温がゆるやかに下がることで眠気が出やすくなりますが、ストレスや過緊張が強いと、その切り替えが遅れがちです。

そこで注目されるのが就寝前の入浴です。ぬるめ〜やや熱めの湯で皮膚の血流が増えると、入浴後に体の熱が外へ逃げやすくなり、結果として眠りのスイッチが入りやすくなります。研究では、就寝の1〜2時間前の温浴が入眠を早め、睡眠効率を高める可能性が示されています。

目安は40〜42℃で10〜15分程度。長湯や熱すぎる温度は交感神経が高まり、かえって寝つきに影響することもあります。入浴後は汗が引くまで少しクールダウンし、コップ1杯の水分補給をしておくと安心です。浴槽が難しい日は、温かいシャワーや足湯でも「体温の下がり」を作りやすくなります。冷えが強い方は足首や足先を温めるだけでもリラックスしやすくなります。あわせて寝室を涼しめに保ち、光や音の刺激を減らすと、体内時計と自律神経の切り替えが進みます。

不眠症や睡眠リズムの乱れが続く場合は、睡眠衛生だけでなく、認知行動療法(CBT-I)や薬物療法、カウンセリングなど専門的な評価が役立つことがあります。つらさを一人で抱え込まず、早めに相談してください。