がんばっているのに、「まだ足りない」「自分はダメだ」と自分を責めてしまう方は少なくありません。まじめで責任感が強い人ほど、「こんなことで休んでいられない」と自分を追い込み、メンタルヘルスを崩してしまうことがあります。
ここでは、セルフ・コンパッション(自分への思いやり)という考え方をご紹介します。自己肯定感を無理に高めるのではなく、「失敗しても落ち込んでいる自分ごと大切にする」視点を意識することがテーマです。
1.セルフ・コンパッションとは何か
セルフ・コンパッションは、失敗したときや落ち込んだときに、自分を叱りつける代わりに友人に接するような優しさで自分に声をかける態度を指します。「みんな失敗することがある」「今はつらいけれど、そのうち回復していける」と、現実を否定せずに受け止めながら、自分を痛めつける言葉だけは少しずつ減らしていくイメージです。
ポイントは、「甘やかし」ではなく、長期的に自分を守る姿勢だということです。心がボロボロになるまで働き続けるより、休息や睡眠を確保し、必要なときに助けを求められる人のほうが、結果的に仕事や学業のパフォーマンスも保ちやすくなります。
2.自分を責めるクセが強い人の特徴
自分に厳しすぎる人は、「完璧にできなければ意味がない」「迷惑をかけてはいけない」といった思い込みのルールを抱えていることが多く見られます。その結果、小さなミスでも「最悪だ」「自分は向いていない」と極端に解釈し、強いストレスを感じやすくなります。
また、他人と自分を常に比較してしまうのも特徴の一つです。SNSで他人の成功だけを目にしていると、「自分だけ頑張れていない」という感覚が強まり、休息をとることに罪悪感を覚えやすくなります。こうした慢性的な自己批判は、うつ病・不安障害・不眠症のリスクを高める要因と考えられています。
3.今日から試せる小さな一歩
セルフ・コンパッションは、特別な性格の人だけが身につけられるものではありません。意識的な「練習」で少しずつ育てることができます。失敗した場面を思い浮かべ、「同じことが友人に起こっていたら、どんな言葉をかけるだろう?」と心の中で問いかけ、その言葉を自分にも向けてみるだけでも立派な一歩です。
完全に自己批判をなくす必要はなく、「責める声」と「支える声」のバランスを少し変えていくことが現実的なゴールです。こうした姿勢が身についてくると、ストレスや不安があっても、必要以上に自分を傷つけずに過ごしやすくなります。
最後に
もし自己批判やストレス、睡眠の乱れが続き、日常生活や仕事に支障が出ていると感じたときは、一人で抱え込まずに専門家に相談してみてください。医師による診察やカウンセリングは、こころの負担を整理し、セルフケアの優先順位を一緒に考える手がかりになります。