1.「考えすぎ不眠」はなぜ起こるのか
布団に入ると、仕事の反省や明日の段取りばかりが浮かび、目が冴えてしまう——これは「考えすぎ不眠」ともいえる状態です。日中は別の用事で気が紛れていますが、静かな夜になると、未処理の心配ごとが一気に前面に出てきます。脳は「問題を解決しよう」とフル回転し、交感神経が高ぶることで、睡眠ホルモンや体温のリズムが乱れ、寝つきが悪くなったり、浅い睡眠が続いたりします。
2.認知行動療法で「考え方のクセ」に気づく
眠れない夜に浮かんでくる考えには、いくつか共通するクセがあります。例えば「明日の会議で失敗したら終わりだ」「また眠れなかったら、もう仕事に行けない」など、最悪のケースばかりを想像してしまうパターンです。認知行動療法では、こうした自動的に浮かぶ考えを書き出し、「本当にそうだろうか?」「別の見方はないか?」と問い直していきます。少し距離を置いて眺めるだけでも、100点か0点かで考える思考から、「うまくいかなくても修正できる」「眠れない日があってもなんとかやってきた」という現実的な視点を取り戻しやすくなります。
3.マインドフルネスで「今、この瞬間」に戻る練習
考え方を整えると同時に、頭のスイッチを切り替える練習も役立ちます。マインドフルネスと呼ばれる方法では、「過去の反省」や「未来の心配」から一度離れ、今の呼吸や体の感覚に意識を向けます。寝る前に、ゆっくりと息を吸って吐く感覚や、布団が体に触れている感覚を数分間だけ味わってみましょう。考えごとが浮かんでも追いかけず、「考えたくなる気持ちが出てきたな」とラベルを貼って、そっと呼吸に意識を戻します。完璧に無心になろうとする必要はなく、「少しだけブレーキをかける時間」をつくるイメージが大切です。
4.寝る前の「終業儀式」で心をオフモードに
睡眠を守るには、夜の生活リズムと環境づくりも欠かせません。おすすめは、就寝1時間前を「終業タイム」と決め、メールや業務チャット、ニュースアプリから離れることです。簡単なストレッチや、カフェインのない温かい飲み物、ぬるめのお風呂などを組み合わせて、自分なりの「仕事を終える合図」をつくりましょう。「今日できたことを3つ書き出す」「明日のタスクをメモに預けて、あとは紙に任せる」といった小さな習慣も、頭の中の“営業終了”を助けてくれます。
5.つらい不眠が続くときは、早めに専門家へ
「眠れない夜」が何週間も続くと、うつ病や不安障害など、こころの病気につながることがあります。睡眠薬や漢方薬だけでなく、認知行動療法やマインドフルネスなどを組み合わせることで、根本的な改善を目指せるケースも少なくありません。一人で抱え込まず、早めに相談の場を持つことが大切です。