心のクリニック 医療コラム
2025年11月27日
心の「ダッシュボード」をつくる気持ちノートのすすめ

気づいたら心もからだも限界に近づいていて、はじめて精神科や心療内科を受診される方は少なくありません。ストレスや不眠は、ある日突然悪化したように見えて、実は少しずつ積み重なっていることが多いものです。「まだ大丈夫」と頑張り続ける方ほど、変化に気づきにくくなります。

そこでおすすめしたいのが、毎日1〜2分だけ自分の状態を書きとめる「気持ちノート」です。特別な道具は不要で、スマホのメモでも紙のノートでも構いません。「書く」ことで頭が整理され、日々のストレスや睡眠の変化に気づきやすくなります。

まずは、次の3つの項目を1〜10点でざっくりつけてみましょう。
①睡眠の質(ぐっすり眠れたか)
②気分・不安(落ち込みやイライラ、不安の強さ)
③からだのサイン(頭痛・肩こり・胃の痛み・だるさなど)

点数は「なんとなく」で大丈夫です。細かく悩むより、「昨日よりまし」「ここ数日ずっと低い」くらいの感覚でつけていきましょう。余力があれば、「今日印象に残った出来事」「うれしかったこと・しんどかったこと」を一言ずつ書き添えます。長く書こうとすると続かないので、1〜2行で十分です。

大事なのは、数日〜1週間分をまとめて眺めてみることです。例えば、
・残業が続いた2日後から急に眠れなくなっている
・特定の予定の前だけ、お腹の調子が悪くなっている
といったパターンが見えてくることがあります。こうした「自分なりの傾向」に気づくと、ストレス対策や睡眠の整え方が立てやすくなります。

もう一つのポイントは、「つらくなりすぎる前の相談ライン」を決めておくことです。例えば、「3日以上続けて睡眠が4点以下になったら」「1週間、不安や落ち込みが7点以上の日が多いと感じたら」など、自分なりの目安をあらかじめ考えておきます。そのラインを超えたら、一人で抱え込まず、早めに専門家に相談するサインだと捉えましょう。

調子が悪い時期には「ノートをつけること自体がしんどい」と感じる日もあるかもしれません。書けない日があっても自分を責める必要はありませんし、「今日はぐったり」「今日はなんとか1日こなした」など、一言だけでも十分な記録になります。心のエネルギーが少ないときは、点数だけつける、週末だけ振り返るなど、負担にならないペースで続けてみてください。

気持ちノートは、診察やカウンセリングの場でも大きな助けになります。「いつ頃から睡眠が悪くなったか」「どのタイミングで不安が強くなるか」といった情報は、薬や休職の判断、職場への伝え方を考えるうえで重要です。主治医やカウンセラーと一緒にページを見返すことで、自分では気づかなかったパターンが見えてくることもあります。