「気づくとスマホを触っていて、寝るのが遅くなる」「布団に入ってからSNSを見続けてしまう」。外来でも、そんな相談をよく伺います。スマホ自体が悪いわけではありませんが、使い方が偏ると、睡眠の質の低下や、気分の落ち込み、不安の高まりにつながることが、国内外の研究から分かってきました。
特に問題になりやすいのが、「寝る直前」と「なんとなく触っている時間」です。画面の光は体内時計を遅らせ、寝つきを悪くします。また、終わりのないスクロールや刺激的な情報は、脳を興奮させたままにし、布団の中でも頭が休まらなくなります。その状態が続くと、日中の集中力低下やミスの増加、イライラの増幅にもつながりかねません。
実際に、スマホの使い過ぎと睡眠の質の悪化、抑うつや不安症状の増加との関連を示した調査は数多くあります。一方で、スマホと程よい距離を保てている人ほど、メンタルの状態が安定しているという報告もあります。つまり、「スマホが悪い」のではなく、「スマホとの付き合い方」を整えることがポイントなのです。
今日は、スマホと心地よい距離を保つための3つのルールを紹介します。どれも「がまん」より「工夫」で続けやすくすることを大切にしています。
1つ目は、「寝床からスマホを追い出す」ルールです。寝室にスマホを持ち込まず、充電はリビングなど別の場所で行いましょう。難しければ、せめて就寝30〜60分前からは画面を見ない時間をつくるのがおすすめです。最初はそわそわしても、数日たつと「かえってよく眠れる」「翌朝のだるさが減った」と感じる方が多くいらっしゃいます。
2つ目は、「通知をダイエットする」ルールです。メッセージアプリやSNSのプッシュ通知が鳴るたびに、注意力は細切れになります。まずは緊急性の低いアプリの通知をオフにし、確認する時間を1日に数回にまとめてみましょう。ホーム画面からゲームやSNSを外し、すぐに触れない位置に移すだけでも、「なんとなく開いてしまう」回数は減っていきます。
3つ目は、「置きかえ習慣を決めておく」ルールです。「手持ちぶさた→スマホ」ではなく、「手持ちぶさた→短いストレッチ」「→深呼吸3回」「→今日よかったことを1つメモする」など、別の行動をあらかじめ用意しておきます。人の脳は“ゼロにする”より“別のパターンに乗り換える”方が楽に続くと言われています。結果として、スクリーンタイムが少し減るだけでも、ストレスや不安が和らいだという報告も増えています。
大切なのは、「完璧にやる」ことではなく、「少しずつバランスを取り戻す」ことです。1日中スマホを我慢する必要はありません。まずは寝る前30分だけ、通知をしぼるだけ、置きかえ行動を1つ決めるだけでも十分な一歩です。
もし、スマホの使い方を変えようとしてもなかなかうまくいかない、睡眠不足や気分の波、仕事や学校への支障が続いていると感じる場合は、早めに専門家に相談してください。考え方や生活リズムの整え方を一緒に確認しながら、無理のない対策を一緒に探していくことができます。