ストレスや不安が続くと、「休みたいのに頭が休まらない」「ベッドから起き上がるのもおっくう」という声をよく伺います。そんなとき、多くの方は「まずはしっかり休まなきゃ」と考えますが、実は“休息”と同じくらい大切なのが、無理のない範囲で体を動かすことです。激しいスポーツではなく、呼吸が少し弾む程度の「ゆるい運動」が、メンタルの回復に役立つことが分かってきています。
ポイントは、「頑張る運動」ではなく「整える運動」として取り入れることです。きつい筋トレをいきなり始める必要はありません。むしろ、ハードルが高いと三日坊主になりやすく、自分を責める材料が増えてしまいます。心を守るための運動は、“少なく・ゆるく・続ける”が基本です。
まず取り入れやすいのが「ゆっくり歩く」ことです。目安は、会話ができるくらいの速さで10分から15分ほど。できれば外に出て、空や街路樹、季節の変化に目を向けながら歩いてみましょう。一定のリズムで足を動かすと、自律神経のバランスが整いやすくなり、不安やイライラが少しずつ和らぐとされています。天気が悪い日や外出が難しい場合は、室内を行ったり来たりするだけでも構いません。
次におすすめなのが「伸びる動き」をいくつか決めておくことです。たとえば、背伸びをして胸を開く、肩をゆっくり回す、首を左右に倒して深呼吸をする、といったシンプルなものでも十分です。1つの動きを15〜30秒ほど、呼吸を止めないように意識しながら行ってみてください。パソコン作業やスマホ時間が長い方は、固まった筋肉がほぐれることで、頭の重さやだるさが軽くなることがあります。
「時間がない」「続ける自信がない」という方は、生活の中に“ついで運動”を埋め込むのも一つの方法です。エレベーターの代わりに階段を使う、電車やバスを一駅だけ歩いてみる、歯みがきの間にかかと上げをしてみるなど、「ついでにできる動き」を決めておくと、特別なやる気がなくても自然と体を動かす機会が増えます。
大切なのは、「どれくらいやったか」よりも「やさしく続けられたか」です。気分が落ち込んでいる日は5分歩くだけでも十分ですし、「今日は玄関まで出たからOK」と自分に合格点を出してあげてください。完璧を目指す必要はなく、「ゼロよりちょっと動けたら花丸」というくらいの気持ちで続けてみましょう。少しずつでも体を動かし続けることで、睡眠リズムや食欲が整いやすくなり、結果的にメンタルの回復力も高まりやすくなります。
なお、心臓や関節に持病がある方は、無理に運動量を増やさず、主治医と相談しながら少しずつ負荷を調整していくことが安心です。「今日はここまで」と自分で線を引くことも、大事なセルフケアです。
もし、動き始めてみても気持ちの重さが変わらない、仕事や学校に行けない日が続く場合は、一人で抱え込まず専門家の助けを借りることも大切です。