心のクリニック 医療コラム
2025年11月14日
敏感さを「弱点」から「センサー」に変えるコツ

音や人混み、ちょっとした表情の変化にもすぐ気づいて疲れてしまう。そんな「敏感さ」に悩んでいる方は少なくありません。最近はHSP(刺激に敏感な気質)という言葉も広まり、自分の繊細さに名前がついてホッとする一方、「このまま仕事を続けられるのだろうか」と不安になる方も多くいらっしゃいます。

大切なのは、「敏感だから弱い」のではなく、「情報をたくさん拾うセンサーを持っている」という見方に切り替えることです。そのうえで、センサーの扱い方を学べば、ストレスや不安に押しつぶされにくくなります。丁寧さや共感力、危険をいち早く察知する力など、敏感さゆえの強みも少なくありません。

まず意識したいのは「刺激の量」を調整することです。たとえば、通勤ラッシュがつらい場合は、少し早めの電車に乗る、音楽や耳栓で音の刺激を和らげる、といった工夫が役立ちます。職場では、集中したい作業の前に席を変える、ブース席や会議室を短時間だけ借りるなど、「自分の力で環境を整える一歩」を探してみましょう。

人間関係でも、すべてに全力で反応しようとすると心が持ちません。相手の機嫌やメールの文面を読み込みすぎてしまう方は、「今、私は何を事実として知っているか」「これは相手の問題か、自分の問題か」と一度立ち止まる練習がおすすめです。これは認知行動療法でもよく使われる考え方で、感情にのまれずに状況を見る力を少しずつ育ててくれます。

一日の中に「何もしない1〜2分」をあえて挟むのも有効です。静かな場所で目を閉じて、呼吸の出入りだけに注意を向ける簡単なマインドフルネスでもかまいません。雑念が浮かんでも追いかけず、「考えごとが出てきたな」とラベルを貼って、そっと呼吸に意識を戻します。これは、敏感なセンサーを一時的に休ませ、神経の興奮をクールダウンさせる時間になります。

また、敏感な方ほど「自分だけが頑張らないと」「迷惑をかけてはいけない」と考えがちです。その結果、休憩や睡眠を削り、うつや適応障害、不安症状につながることもあります。仕事や家事を「やることリスト」だけで管理するのではなく、「休む予定」をあらかじめカレンダーに書き込むのも一つの方法です。短い散歩、温かい飲み物を飲む時間、スマホを見ない10分など、小さな休息を一日の中にいくつか配置してみてください。

もし「ちょっと敏感かも」程度ではなく、日常生活に支障が出ていると感じる場合は、専門家のサポートを早めに検討してみてください。眠れない日が続く、仕事に行こうとすると動悸やめまいが出る、人と会うのが怖くなっている――こうしたサインが続くとき、心療内科・精神科、メンタルクリニックで相談することは、自分を甘やかすことではなく、心身を守るための大切な行動です。