心のクリニック 医療コラム
2025年11月10日
気圧とメンタルの揺れを味方にする——“低気圧前”の整え方

雨や台風の前になると、だるさや頭の重さ、イライラや不安が強まる——そんな「天気に左右される感じ」は、多くの方に共通します。気圧や日照の変化は自律神経や睡眠リズムに影響し、気分・集中力・痛みの感じ方にも波をつくります。大切なのは、「天候=敵」と構えず、揺れを前提に“崩れにくい日常設計”に変えていくことです。

まず、予定は“体調の山谷”に合わせて。低気圧が近づく予報の日は、重要な会議や重作業を午前中に寄せ、夕方は判断・集中が要るタスクを避ける。移動や会食など体力を使う約束は、気圧が安定する日に回す。どうしても外せないときは「開始前に10分の休憩」「終了後に予定を入れない」など、回復の余白をセットで組み込みます。

次に、睡眠と光のコントロール。朝はカーテンを開けて強めの光を浴び、体内時計をリセット。日中はなるべく屋外の明るさに触れ、夜は就寝2時間前から照明と画面光を落とす。これだけで「寝つきが遅れる→翌日さらにだるい」という悪循環を断ちやすくなります。寝室は暑すぎず寒すぎず、寝る前の入浴は就床1〜2時間前に。

痛みや重だるさが出やすい方は、“早めの対処”がカギ。こめかみや肩のこわばりを感じたら、カフェインを摂り過ぎない範囲で温かい飲み物を少量、首・肩をゆっくり回し、側頭部〜耳まわりを優しくほぐす。耳の上部を軽くつまみ、呼吸を合わせて行う“耳マッサージ”は、めまい・頭重のセルフケアとして取り入れやすい方法です。頭痛持ちの方は、自己判断で鎮痛薬を増やすより、誘因(睡眠不足・ストレス・天候など)を記録して医療者と予防策を検討すると、再発を減らしやすくなります。

気分の落ち込みや不安の“底上げ”には、軽い有酸素運動が効きます。目安は20〜30分、やや息が上がる程度の速歩き。低気圧が近い日は屋内でのステップ運動や踏み台昇降に置き換えてもOK。「できたらやる」では続かないので、通勤の一駅分を歩く、昼休みに5分だけ早歩き、エレベーターを一回だけ階段に、のように“生活に混ぜ込む”のがコツです。

最後に、気圧アプリなどで「崩れやすい日」を見える化しましょう。事前に“省エネモード”へ切り替える合図ができると、自己否定が減り、必要な休息を遠慮なく取れるようになります。症状が強い・長引く・仕事や家事に差し支える場合は、我慢せず専門家へ。治療やカウンセリング、生活リズムの調整で「揺れにくい地盤」を一緒につくれます。