心のクリニック 医療コラム
2025年10月27日
朝の光と小さな運動で「こころの回復力」を育てる

仕事のプレッシャーや人間関係のストレスが続くと、集中力が落ち、眠りが浅くなり、ちょっとした音にもびくっとする——そんな変化は、うつ傾向や適応障害のサインかもしれません。放っておくと、不安感が強まり、休職や復職の判断も難しくなります。今日からできる小さな積み重ねで、脳内のセロトニンとドーパミンのバランスを整え、からだとこころの回復力を取り戻しましょう。

第一歩は「朝」。起床後1時間以内に窓を開け、2〜3分で良いのでベランダや玄関先で自然光を浴びてください。目から入る光は体内時計をリセットし、夜の眠気のスイッチ(メラトニン)を適切な時間に入れやすくします。天気が悪い日も、屋外の明るさは室内より十分に強いので効果があります。

次に「からだを動かす」。激しい運動は不要です。朝の散歩10分、階段を1〜2階分上がる、椅子からの立ち座りを20回——これだけでもセロトニン神経が活性化し、不安の波が小さくなりやすい。午後は姿勢を意識し、肩甲骨を回すストレッチを1時間に1回。座りっぱなしは睡眠の質を下げ、イライラや焦りを強めます。

食事も味方に。主食・たんぱく質・野菜をそろえ、昼に炭水化物を適量とると、午後の集中が安定します。夜のカフェイン・アルコールは「寝つきをよくする錯覚」を生みますが、実際は浅い睡眠を増やし、翌日の不調や不安を悪化させがちです。寝酒の習慣は段階的に減らしましょう。

仕事でつらい時は「環境の調整」を。上司への相談、業務量の一時的な緩和、在宅と出社のバランス調整、通勤訓練の段階設定——これらは甘えではありません。心身の安全が守られてこそ、能力は発揮されます。休職は「逃げ」ではなく、回復と再発予防のための医療的選択肢です。復職前は、起床・就寝・活動の記録を2週間ほど取り、負荷を少しずつ上げる「リハーサル期間」を設けると、ぶり返しを防ぎやすいです。

人間関係で疲れたら、「言葉の選び方」を見直してみましょう。相手を動かす前に、まず相手を理解する姿勢を示す。要求は短く具体的に。お願い・提案・感謝の順に伝えると、対立が和らぎます。自分を責める独り言が増えている時は、紙にその言葉を書き、事実と解釈を分けて整理するだけでも不安は下がります。

つらさが2週間以上続く、睡眠が崩れた、朝の動悸や強い不安がある——そんな時は、専門家に早めに相談してください。薬物療法、認知行動療法、カウンセリング、産業医面談などの選択肢を、生活習慣の整えと並走させることが再発予防の近道です。