心のクリニック 医療コラム
2025年10月18日
「小さなリズム」で心を守る――休職から復職、そして毎日のコンディションづくり

不調が続くと、気持ちも予定も一気に崩れがちです。そこで鍵になるのが「小さなリズム」を先に整える発想です。心の回復は、気合いよりも手順。今日は、休職中から復職後まで役立つ実践法を、睡眠・生活・思考・コミュニケーションの4つの観点でまとめます。

◆睡眠のリズム
最優先は「起床時刻の固定」です。まず起きる時刻を一定にし、朝の光を浴び、体を動かす。これだけで体内時計が整い、夜の眠りやすさが変わります。就寝前はスマホやPCの強い光を避け、入浴は就寝2時間前まで。夕方以降のカフェインや夜遅い重い食事も控えましょう。「眠れないときは一度ベッドから出る」も有効です。布団=眠る場所という条件づけが作れます。

◆生活のリズム
休職中は「通勤の代わりの朝ルート」を決めると、復職準備がスムーズです。起床→洗顔→着替え→10〜20分の散歩→軽い朝食、までを同じ順序で。週に数回は勤務時間帯に合わせて外出し、電車やバスの混雑に慣らしておくと、自律神経の過敏が和らぎます。日中の軽運動は不安の高ぶりや落ち込みを和らげ、夜の睡眠にも好影響です。

◆思考のリズム
不安や焦りは「全部まとめて」考えると膨らみます。紙に「今日できる最小単位」に分解し、1つずつ処理しましょう。たとえば「復職準備」を「起床固定」「通勤時間帯の散歩」「上司へ近況連絡」の3つに割るだけで、負荷が下がります。気持ちの整理には3分メモが便利です。事実/解釈/次の一歩の3行だけを書き、反芻思考のループを断ち切ります。

◆からだのリズム
朝はたんぱく質を含む朝食をとり、よく噛んで食べると、腸から脳への信号が安定し、日中の集中が持続します。日光と軽い運動はセロトニンの働きを助け、夕方以降は強い光やカフェインを控えることでメラトニンの切り替えがスムーズに。腸・脳・自律神経の流れを意識すると、うつや不安の波が小さくなり、適応障害の再発予防にもつながります。

◆コミュニケーションのリズム
職場への伝え方は「I(アイ)メッセージ」を基本にすると摩擦が減ります。「私はこう感じる/こう助かる」を主語に据えると、相手を責めずに要望が伝えられます。面談では最初に「今日の目的」と「結論のメモ」を用意し、話が脱線したらメモに戻る。往復の対話を意識すると、誤解が減ります。

小さなリズムは、脳の報酬系やストレス反応のバランスを整え、不安・抑うつ・適応障害の再燃リスクを下げます。大切なのは完璧さではなく、7割で回す日常です。うまくいかない日があっても、翌朝の起床時刻だけは守る——それが回復曲線を上向かせる最短ルートです。睡眠、運動、栄養、言語化、そして丁寧な対話の積み重ねが、復職後の安定した働き方を支えます。

専門的な支援も併用すると回復は加速します。お一人で抱えず、医師の診断やカウンセリングをご活用ください。