心のクリニック 医療コラム
2025年10月9日
働くあなたの心を守る「3本柱」――休職・不調の予防・復職をつなぐ実践ガイド

「最近、会社に行くと胸がざわつく」「眠っても疲れが取れない」――こうしたサインは、うつや不安、適応障害の入り口かもしれません。無理を重ねて限界を越える前に、休職を選ぶのも立派なセルフケアです。本コラムでは、精神科・心療内科での臨床と最新知見を踏まえ、休職から復職までを支える3本柱(睡眠・行動・対話)を紹介します。横浜・日吉エリアで働く方にも実践しやすい内容です。

第1の柱は睡眠リズムの再設計。朝の光を毎日20〜30分浴びるだけで体内時計が前に進み、メラトニンの分泌が夜に整いやすくなります。起床後にカーテンを開け、ベランダや屋外で日光を浴びましょう。夜はスマホや強い照明を控え、就床・起床時刻を一定に。睡眠が整うと不安の波が下がり、うつ予防にもつながります(睡眠、セロトニン、ドーパミン、ストレスの土台を整えるイメージ)。

第2の柱は小さな行動の積み上げ。うつや適応障害の回復初期は「やる気→行動」ではなく「行動→やる気」。通勤前に10分の速歩、昼に外へ出て深呼吸、階段を1フロア分だけ上る――短時間でも気分は上向きます。夕方の軽い有酸素運動は入眠にもプラス。腸にやさしい食事(発酵食品、食物繊維、たんぱく質)を意識すると、トリプトファン代謝と腸内環境が整い、メンタルの安定に寄与します。

第3の柱は対話と認知の使い分け。仕事の不安が頭から離れない時は「心配タイム」を1日15分だけ確保し、そこに不安を集めます。日中に浮かんだ心配はメモに退避し、指定時間にだけ向き合う。実際の対処が必要な不安はタスク化し、仮説上の不安は「今は保留」に分類。さらに1日3つの「良かったこと」を短文で書く習慣は、注意の焦点をネガティブからポジティブへ誘導し、再発予防にも有効です。職場では「上司に相談」「業務の棚卸し」「期限と優先度の再設定」を小さく始め、復職段階では段階的に業務量を上げるのがコツ。人間関係のコミュニケーションは「短く伝える→相手の意図を確認→要約で締める」の3手順が機能します(人を動かす・聞く・伝えるの基本)。

無理のない休職計画、睡眠と行動の設計、対話の導線――この3本柱を回し続けると、復職は“点”ではなく“線”で安定します。うつ・不安・適応障害でお困りの方、睡眠の乱れやストレスで限界を感じる前に、精神科・心療内科で早めに相談し、カウンセリングや薬物療法を必要に応じて併用しましょう。