- ダイジェスト版 -

恐怖・夢・悪夢・不安・鬱状態 その理論的構造
悪夢・鬱状態の脳内インフラストラクチャ―とその治療
著:医療法人心のクリニック 田村 元
全てのテキスト・画像の無断転用を禁じます。

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恐怖・夢・悪夢・不安・鬱状態 その理論的構造
悪夢・鬱状態の脳内インフラストラクチャ―とその治療
著:医療法人心のクリニック 田村 元
全てのテキスト・画像の無断転用を禁じます。
恐怖感・夢・悪夢・不安感・鬱状態の構造と治療

はじめに表題の通り精神機能(うつ状態)について、大まかに個人的な考えをご説明します。 学問のレベルではなく、診察室レベルの内容ですのでご承知おき下さい。

昔読んだニュートンの万有引力の話の中で特記すべき点は、

  • ① りんごが木から下に落ちること
  • ➁ 月が地球に落ちてくることはなく、浮かんで見える事
  • ③ 潮には干満が存在する事
  • それらの現象をそれまでの人が皆、大した疑問も持たず当たり前の事としてそのまま受け入れていましたが、それぞれを別々に詳細に観察・分析しただけではなく、普通なら一見 見過ごしてしまうそれらに共通する性質を熟考の末、万有引力の法則として 抽出・統合した点にある事に気づきました。

    ただ自然界では単独の法則がすべてを支配できるわけではなく積み残したものもそれなりにあったわけで、それらは後進に引き継がれました。
    しかし100%ではなくても十分すぎる価値があると認められています。
    そのことを知った後で、大げさではありますが、精神疾患の多くや通常人の精神機能としてみられる「鬱状態」と呼ばれる共通の性質を抽出し、少しでも法則性を明らかにする事が出来ないかと考えました。

    物理学には数式がありますが、精神機能については評価の道具(尺度)がありません。
    しかし中枢神経の薬物に対する反応から何か導けるものがあるのではないかと考えました。
    原理・原則を意識しました。恐怖感や緊張感を止める抗恐怖薬・不安感やうつ状態を止めるSSRI類の抗うつ薬・睡眠に導く睡眠関連薬を用います。

    わかりやすいように結論から示します。
    当院における1500人以上の患者さんの診察を元にした内容です。

    うつ状態とは幼児期の恐怖感(恐怖の悪夢を見るのでわかります)から始まり、恐怖の準備状態から恐怖感・緊張感・不安感の増強を経て本格的なうつ状態へと進展するシームレスなモデルを考えています。
    幼児期に始まったうつ状態はそれに続いて見かけ上の消長を繰り返します。
    幼児期・小学校から高校時代のいじめられた体験・成人後の職場などで受けた攻撃などが代表的な損傷の要因として挙げられます。
    両親の口喧嘩(不仲)により生じた恐怖の悪夢は30年後に両親の仲が回復していても患者さんにとっては消える事のない記憶となります。
    (その他にも無数の要因の可能性があります) 

    ある人に生ずる恐怖の強さの範囲を0~100とします。
    このうち0~60を恐怖が脳内にあっても弱すぎて“ 意識できない恐怖”とします。
    “ 恐怖感があると意識できる恐怖感 ” は60~100となります。
    意識できなくても恐怖が存在することがあると考えないとつじつまが合いません。
    しばしば、長期間続いた恐怖(感)に、様々な負荷・疲弊・不眠等が加わる事により不安感が出現します。不安感が持続することにより本格的なうつ状態に移行します。
    恐怖(感)・緊張感・心配事等は相互に移行する複雑な動きをします。
    加えて頭痛・肩こり・眩暈・吐き気・下痢・胃部不快感・歯ぎしり・息苦しさ等多彩な身体症状が出現します。(下記と重複)
    これらは概ね同一薬剤(抗恐怖薬)のそれぞれの相当量に反応して減弱~消失します。

      
    恐怖(感)

    恐怖(感)とは人間を含むすべての動物の精神や肉体等の安全を脅かす現在までの記憶と精神の状態です。
    心配・怖さ・緊張感・悪夢などは、日常生活の中では違和感を感じないことも多いのですが、これらも恐怖(感)に属します。
    そしてこれらの恐怖(感)は同一の個体の中でも状況や時間により質や量に変動が見られます。

    人格の状態は “ 多くの人格の構成要素の集合体 “ として理解され、それに対する侵襲を人格の損傷と表現します。
    この各要素は反対方向のもの (+)と(-) がセットとなります。(下記参照)
    患者さんは恐怖を恐怖(感)として意識していない事が多いのですが、こちらから指摘するとそれ認めて納得してくれます。
    強くない恐怖(感)は怖さ・緊張感・心配などとも表現できますが無数に存在する人格の構成要素の集合体ともいえます。(前述)
    この恐怖(感)は長い間記憶されます。(数十年も続くこともあります)
    恐怖の悪夢の部分的な原因となる事がしばしばあります。

    日常的な無数の人格の構成要素の中から6例を挙げます.

    恐怖・緊張・心配 中 立 非恐怖・勇気・希望
    よく優しいと言われる <-> 優しいより強気である
    考えて・落ち込んで堂々巡り <-> 思考が進む
    失恋の恐怖 <-> 恋の始まりの予感
    いろいろ怖がりである <-> 大胆である
    警戒(心)感が強い <-> 安心しきっている
    孤独は寂しい(怖い) <-> 仲間は心強い

    いずれも誰にでも見られる状態です。
    “ 詳細は( Full Version 1 ) を参照してください “

    強く持続する恐怖感と緊張感は可逆的な身体症状を誘起します。
    頭痛(のあるもの)・肩こり・歯ぎしり・食いしばり・下痢(のあるもの)・腹痛・動悸・胃痛・息苦しさ・吐き気(のあるもの)などが見られます

    恐怖感を伴う悪夢と恐怖感を伴わない悪夢
    うつ状態の患者さんの治療で不安感をターゲットとして抗精神病薬(SDAM)を投与したところ、それまで消えることがなかった恐怖感を伴う悪夢が消えることを確認しました。
    (以後抗恐怖薬または抗悪夢薬と表記します)
    その後の多くの治療経験から、“ 恐怖をともなう悪夢 ” や、“ 恐怖を伴わない悪夢や恐怖を伴わない日常的な夢 ” はSDAMや睡眠関連薬によって、同一人の中で日を違えて選択的に別々にコントロールできることが確認できました。
    ( Full Version12参照 )

    不安感

    不安感とは人間を含むすべての動物が、自分の未来に対して恐怖感や恐怖感経由の緊張感などの脅威を感じた時、それに引き続いて起こる脳の反応です。
    恐怖感が先行し、条件により不安感が誘起されます。
    時に先行した恐怖感は 意識されず不安感だけを感じていると感じる事があります。(理由のない不安感)
    不安感は恐怖感に引き続き恐怖感とセットで出現しますが、恐怖と不安のセットがいくつか同じ時期に起こると順番が分かりにくくなります。
    不安感を止めるにはまず先行する恐怖感(抗恐怖薬)を止めて、その後不安感(SSRI類の抗うつ薬)を止めるのが順番です。

    理由のない不安 と 理由のある不安
    (その概念的な区別)

    Ⅰ理由のない不安感(原因不明)
    元来、不安感は感情そのものであり、それ自体に理由は含まれない。
    先行する恐怖が不安感を感じている本人に認識されないときに、“理由がない不安感と呼ばれる。”
    Ⅱ理由のある不安感(原因明確)
    不安感そのものには理由はないのはⅠと同様であるが先行する、認識された恐怖感(理由)と不安感とを合わせて“ 理由(恐怖感)のある不安感 “と通常表現されます。
    Ⅰ 及び Ⅱを区別する理由は,それぞれに効果的な異なる薬剤が存在するからであり、また状況により両剤の併用が効果的であるからです。
    例えば恐怖の部分には抗恐怖薬 、例えば不安部分にはSSRI等の抗うつ薬 、例えば両方ある時には両薬併用となります。

    恐怖感と不安感の区別の仕方
    (時間による区別と効く薬による区別・・・両者は一致します)

    恐怖(感)と不安感は通常は区別されずにまとめて一つの文として表現されていることが多いと思います。
    しかし、心配や恐怖(感)の結果が不安感です。

    例1)仕事で大きな損害を会社に与えてしまい、この先不安である。
  • 恐怖部分:仕事で大きな損害を会社に与えてしまい雇用が心配だ。
    恐怖部分 : 過去・現在の事
  • 不安部分:雇用を失うと生活や子供の学費が払えるか不安である。
    不安部分 : 未来の事
  • 例2)コロナウイルスが上陸し不安になってマスクを買いに走った。
  • 恐怖部分:コロナウイルスが上陸したと知って怖いと思った。
    恐怖部分 : 過去・現在の事
  • 不安部分:感染すると将来生命の危険があると思うと不安でマスクを買いに走った。
    不安部分 : 未来の事
  • 恐怖感と不安感の相互の関係

    不安感の形成には理由が必要であり、当然その理由は不安感より時間的に前に起こります。
    その理由とは先行する恐怖感を指します。恐怖感そのものです。
    恐怖感と不安感とは概念上明確に区別できます。
    そして脳内で起きる神経伝達物質の変化も両者で同じ訳ではありません。

    パニック発作について (ⅠとⅡに分けて考えます)
  • I [恐怖感の体験・記憶] ・・・抗恐怖薬を使用
  • Ⅱ[多数パニック発作の後半の不安部分] ・・・SSRI 類の抗うつ薬
  • 両方の薬剤をほぼ同時に投与します。

    恐怖感が不安感に発展する事を考えると、抗恐怖薬で充分に恐怖を止めると、不安感には発展しない事になります。
    実際に恐怖感・不安感があまり強くない時には恐怖感を止めれば不安感へ発展する事を間接的に阻止することができます。
    しかし不安が一定以上に強い時には抗恐怖薬では不安感は止まりません。
    SSRI類の抗鬱薬が必要です。しかしそれにも関わらず両者(抗恐怖薬と抗うつ薬)を併用する事はきわめて有効です。

    恐怖感は恐怖感であると意識されないことも多いので、いきなり不安感で発症したと感じる患者さんは多いと思います。

    すべてのうつ状態の治療の原則(重症例を除く)
    1. 1:充分な休養と栄養と睡眠が治療開始の前提 適正量の睡眠関連薬の使用
    2. 2:軽度~の心配・緊張・恐怖等の精神症状の除去 適正量の抗恐怖薬を使用
    3. 3:軽度~の心配・緊張・恐怖等による身体症状の除去 適正量の抗恐怖薬を使用
    4. 4:曖昧でよくわからない不安感・涙もろさ・悲哀感の除去 2:3:の抗恐怖薬に加え適正量のSSRI類の不安を除く抗うつ薬を使用
    5. 5:気力・意欲・集中力の低下・楽しみ・元気の喪失
      (本格的な鬱状態)
      SSRI類・SNRI類の抗うつ薬を使用
    6. 6:その他通常の鬱状態に該当当てはまらない状態の治療 その他の向精神薬一般
      実際の治療は担当医にご相談下さい

    毎回強い恐怖感で始まる不安状態の治療について(恐怖の治療と不安の治療を同時に開始する)
    パニック障害 過食症 ギャンブル依存症などに対して
    ―>充分量の抗恐怖薬+相当量の抗うつ薬・抗不安薬を使用

    寛解状態を達成したときどうするか
    ☆ 充分に改善していないときには減薬は出来ません。
    ☆ 鬱状態の症状は樹木に例えることができます。
    1. 土は睡眠関連です。(睡眠関連の薬剤で対応)
    2. 根は恐怖感(人格の損傷部分)です。(抗恐怖恐薬で対応)
    3. 幹は不安感と気力の低下です。(SSRI類の抗うつ薬や時に抗不安薬で対応。)
    4. 末端の枝や葉の治療には抗不安薬等で対応。
      (必要が有れば身体症状に対する薬剤(中枢作動薬以外)で対応。)
      (うつ状態以外の精神症状の治療は別途 適正に 行います)
    ☆ 減薬の順番です。
    1. 樹木の末端から少しずつ減薬します。減薬に1~2年かかる事もあります。
      まずは上部の枝葉の治療薬を減らします。
      それでも幹をSSRI類の抗うつ薬が支えているので大丈夫です。
    2. 次いで幹を支えているSSRI類の抗うつ薬を減らします。
    3. 根の部分で抗恐怖薬により支えられているのでゆっくり行えば失敗はありません。
    4. 十分で安定した睡眠を確保出来れば睡眠関連薬剤は随時減薬を考慮します。
    5. 最後に抗恐怖薬を中止できるか否かです。
      その前提として不安の原因なった恐怖感の原因(人格の損傷部分)が処理出来ていることが望ましいのは勿論です。
      薬物のみによる解決は難しいかもしれません。
      その場合でも、必要であれば損傷された人格を抗恐怖薬で修復しながら薬物からの離脱を目指します。
      時間はかかります。
      言葉ではなく行動が必要です。
      原因がかなり昔の事であった時などは直接の解決が困難な場合も多いと思います。
      代償的な解決が必要な場合もあります。完全な修復でなくてもよいでしょう。
      抗恐怖薬はまだ新しくて歴史の浅い(4~5年)薬ですが時間をかければ有望である事が判明すると思います。
    夢内容の意味を解釈する事の意味

    脳がある程度恒常的な役割や目的を持って積極的に夢を構成するとは考えにくいと思います。
    夢を長期にわたってブロックした時に大きい影響が出るという事は証明できません。
    ひとりの夢を長期にわたって観察し、その人に関する情報を得ることは可能です。
    その人の行動の可能性を予測できるかもしれません。

    夢に意味や目的や予知能力があるという希望的観測があることは知っていますが現在はその事を証明出来たと言える段階ではありません。
    夢を構成する情報が脳の、主として大脳皮質に存在し、深くない睡眠時にコントロールをある程度解かれ、その情報が自由な組み合わせにより様々な形の夢となることはあり得ます。
    そのうちの幾つかが意味を持つ様に見えることはある一定の確率である筈です。

    恐怖の悪夢では、例えばひとりの人が色々な悪夢を見たり、相手の顔が判別できない夢を見たりと意味を探ることが困難な事があります。
    例えば腎臓は尿の生成が主な目的ですが、その成分の一つである尿酸を測定する事で詳細な情報(血液を反映)を恒常的に得ることができます。
    脳の場合ですが、夢を見る事自体に意味があるとしても夢の内容に尿酸の場合と同様に、恒常的な意味を見いだすことは不可能です。
    ただし明確に病的な症状としての夢・繰り返すつらい夢・強い恐怖の悪夢は” キンドリング現象 “ や “ 刷り込み現象 “とともに強制された記憶と考えた方がいいと思います。

    恐怖の悪夢とその検出法

    A 夢全体の分類
    1. 1: 楽しい夢
    2. 2: 日常夢
    3. 3: 恐怖のA悪夢
      恐怖感を伴う夢・自分が被害者で加害者は不明の事が多い。
      悪夢全体 ”から“ 恐怖の悪夢 ”を切り離すと整理と理解が進む。
    4. 4: 嫌悪夢(よくない夢・悪い夢・苦しい夢)(恐怖感を伴わない事)
    5. 5: その他

    B 恐怖の悪夢の4大基本型と亜型 

    1. 1: 知らない人に殺されそうになる(恋人・母親に刺される)
    2. 2: 知らない人に高所から落とされる・落ちる(高層ビル・階段・崖)
    3. 3: 知らない人に追われる夢 (ナイフをもった人に追われる)
    4. 4: 知らない人が鍵を開けて室内に侵入てくる。(ベランダから侵入)

    1~4にそれぞれ亜型があります。この4つの共通した恐怖の悪夢が日を違えてすべてそろうことがしばしばあります。

    C 恐怖の悪夢の検出( 問診 ・ 診察 )

    恐怖の悪夢を見る患者さんの多くは悪夢を見る事は誰にでもある当たり前の事と考えているようです。
    又幼児期に多くの恐怖の悪夢を見ていた患者さんの全ては30年以上も前の事だから今はもう関係ないと感じています。
    当然ながら私も30年以上にわたって直接患者さんの夢の経過を見たわけではありません。しかしこのような例が頻繁に有ります。
    さらに幼児期の出来事にも関わらずその時の出来事を選択的に鮮明に覚えています
    。 また 両親の不仲については直接患者さんに質問しても話してもらえない事もあります。

    悪夢の強い(幼児期に強かった)患者さんに絞ってよく聞くと“ そういえばよく喧嘩をしていた・・ ”と両親の事をやっと話してくれることが良くあります。
    祖父母の喧嘩である事もあります。
    当然ですが悪夢の原因は初回の恐怖の体験より以前にあります。
    前述[ “ 恐怖感の獲得の理由 : FULL VERSION 1]” ]と照合し、さらに恐怖の悪夢の保有者の診察の内容からその概略・詳細を知ることが出来ます。
    恐怖の悪夢の内容が複数ある場合には恐怖感と恐怖の内容が1:1で対応するわけではないので、夢内容の同定は不可能です。(特に重症者)。

    恐怖の悪夢の形成のプロセス

    恐怖の悪夢の構造について

    日常の夢の構造は恐怖の悪夢の構造に比べて単純そうです。
    深睡眠・浅睡眠で夢のオンオフの動作が見られるます。典型的な恐怖の悪夢を見ているときは、恐怖感と恐怖の内容とが別々に、同時に存在して恐怖の悪夢が形成されますが、脳の中では恐怖感と恐怖の内容は区別されていて独立して存在することがわかります。

    恐怖の悪夢の患者さんと接していると恐怖の悪夢には日常の夢と恐怖の悪夢との共通の性質に加えて明らかに異質の性質のものが存在していることに気づきます。
    すると次のように考えないと説明がつかないという状況に追い込まれます。

    [恐怖の悪夢]=Ⅰ[恐怖感]+Ⅱ[恐怖の悪夢の内容]
    恐怖の悪夢は構造を持ってますので恐怖の悪夢の消し方も少なくとも二通りあることになります。
    抗恐怖薬により日常の夢を残しながら恐怖の悪夢のみを消すことができます。
    また睡眠関連の薬剤のみを適切に用いると恐怖の悪夢を残して日常夢のみを消すことができます。(別時間です)
    両者を適切に用いると適切な効果を意図的に作り出すことができます。
    悪夢発現の基本的な構造を推定することができます。
    悪夢の振る舞いを統一的・包括的に説明できると思います。
    悪夢の原因となった幼児期の両親の不仲は30年後の現在夫婦不仲が解消されて平和な家庭となっていて子供である患者さんの脳内では解消することはありません。
    悪夢と恐怖感の動向を観察していると恐怖感は独立して複数存在しているとは考えにくいと思います。

    恐怖感は一塊の神経回路網を形成して脳内に機能的にまとまって存在するのではないでしょうか。
    しかしながら一人でいくつもの恐怖の要素(内容)を抱えている患者さんがいます。
    つまり恐怖感と恐怖の内容は1対1で結びついているものではなく複数の恐怖の内容が一塊の神経回路網(恐怖感)でまとめられているように見えます。
    四つの典型的な恐怖の悪夢を、日を代えてランダムに一つずつ見る患者さんもいます。
    複数の恐怖の悪夢の内容が有っても恐怖を取れば全て消える事が多いと思います。
    悪夢が消えると目覚めが良くなります。 悪夢のON・OFFをオーディオ装置の音のON・OFFと比較してみました。

    オーディオにおける音のON-OFF制御と恐怖の悪夢のON-OFF制御の類似点  
    音の制御

    音響システム (消音)
    オーディオシステム(出力)
    音源・アンプ(増幅器)
    スピーカーより構成される

    情報のソース

    音源:CD のピックアップ

    エネルギー源

    電源:増幅器(オーディオアンプ)

    出力先

    スピーカー

    制御方法

    A : オーディオシステムで音を止める3つ方法
    1:音源(CD)を止める
    2:アンプの増幅機能を止める
    3:スピーカーを切断する・止める

    悪夢の制御

    恐怖の悪夢の消すシステム
    悪夢の生成システム
    恐怖感・扁桃体(神経回路網)
    上行網様体賦活系大脳皮質より構成

    情報のソース

    恐怖感(扁桃体・神経回路網)

    エネルギー源

    覚醒状態:上行網様体賦活系

    出力先

    大脳皮質

    制御方法

    B : 悪夢の生成システムで悪夢を止める4つの方法

    1:恐怖の神経回路網を抑制 ブレクスビプラゾール
    2:上行網様体賦活系強抑制
    3:大脳皮質過覚醒・超低覚醒状態に導く
    4:十二分な深睡眠(催眠系薬剤など)

    参考文献:The Brain As A Machine  (機械としての脳) 
    Sectional Proceedings of the Royal Society of Medicine Vol.950
    精神医学講座
    大統領-ウィリアム・サーガント、M.A.、F.R.C.P.、D.P.M.
    [1957年1月8日]
    機械としての脳
    W.グレイウォルター、MA、Sc.D.著
    バーデン神経学研究所、ステープルトン、ブリストル
    最終的なまとめ

    Full Versionはこちら
    当ブログで提供される情報は、筆者個人の鬱状態全般に関する情報の提供を目的としたものであり、個別の診断や治療、医師による医療行為の代わりとなるものではありません。
    ご自身の症状や治療については、医師以外の方は必ず専門の医師の指示に従ってください。
    なお不明点については直接筆者へお問合せいただく事が可能です。
    kkrcnc@outlook.com

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